遠征的自由帳

ライブ、舞台(主にミュージカル)の記録やら旅行記やら タイトルは造語

コロナ禍のコンサートにおける俳優の「ぜひ劇場に足を運んでください!」に対する違和感

 


8/29
30に行われたホリプロ所属の4人の俳優が行なったコンサート

THE MUSICAL BOXWelcome to my home〜の配信についてのただの所感と願望

 

値段に見合う曲数じゃなかった、ほぼトークショーだった、いつもと違うパンフレットだからよくわからん、配信の見方がめんどう等々あげだしたらきりがないくらい不満や問題点はあるが、今回は挨拶のみに焦点を置いて書いていこうと思う。

 

俳優の発言は一字一句合っているものではなくニュアンスです。読んでいると勘付く方はいると思うが発言した俳優個人の名前は批判が殺到することを防ぐため出さないのであしからず

 

 

 

◯今回の配信について

 俳優たちの配信で見ている人たちへの配慮があまりにも足りていなかった。今回の配信の対象はおそらく劇場に普段こない人ではなく普段から劇場に通っているけどこの状況のせいで来られない人だ。コロナのせいで県を跨げない人、申し込んだけど座席数が半分になったことでチケットを取れなかった人といった、自分たちの力ではどうにもできない人たちが見ていたと思う。私の知り合いもこの公演ではないが、県を跨ぐと会社をクビになりそうで怖くて行けないと嘆いていた。

 

 

◯何が違和感だったのか

 両日、配信を観ている人向けに俳優から「ぜひ劇場に足を運んでください!」といった内容の挨拶があった。言葉は違えど、来てない人たちに来てほしいといったニュアンスの挨拶だ。

 そもそも今回の配信は2.5次元ミュージカルや宝塚の舞台のようなコロナ禍以外でも行なっている千秋楽のライブビューイングとはわけが違うチケットの倍率が高くて取れなかった、生の舞台は高い、生で観たことはないけ気になっていたからといった理由で観に行く人が多い公演の千秋楽で俳優や生徒が「いずれ生で観てみてください!」と発言する分には問題ない。

 

 繰り返すが今回は状況が違う。首都圏に住んでいないから、首都圏にいても家族がいるから外出できないから、申し込んだが感染対策のため座席が半分で当たらなかったから、といった理由で仕方なく諦めたファンが大半だったであろう。妥協だと言っても過言ではない。普段劇場に足繁く通う層が俳優に「劇場に来てください!」と言われても「いや普段なら行ってるよこんな状況だから行けてないの察しろよ」と思うだけである。そのためコロナでなければ、座席が半分でなければ行けたのにという悔しい気持ちを増幅させる要素にしかなり得なかったのだ

 

 

◯その他の気になる発言

 「コロナのおかげでコンサートができた」「これからの世代にコロナのこのような状況があったということを伝えられると思うと少しわくわくする」といった、一見ポジティブに聞こえるけど全く救いになっていないような発言もあった。「これから舞台はきっと戻る」は希望のような言葉に聞こえても、行けなかった側からすると座席数は少なく完全でなくてももうすでに多少戻ってるのにそれでも行けないなんてと悔しい気持ちになる人もいると考えられる。また、「劇場に来てくださった方々だけにもう1曲あります」についても来られなかった人向けの配信と名を打っているのであればアンコール含め全てするべきではないかと現地にいても考えてしまう

 

 

◯どうしたらよかったのか?

 シアタークリエや帝国劇場、博品館劇場やシアタードラマ シティといったいくつかの劇場が生配信やアーカイブ配信を成功させたために、同じようにホリプロも成功させるとばかり思っていた。しかし結果、ここまで不満が残る公演になってしまった。

 今回ホリプロが明確にすることかできなかったことは、普段通っている人がなぜ来られなかったのか、誰に向けての配信なのかという対象であるといえる。商品が流行る理由に対象がしっかりしているという点があるのと同じように、普段やらないこと、今回であれば日生劇場初の試みである配信をなぜ行うことになったのか、生で届けることが最も大切だと思っている出演者や製作側が配信をせざるを得なくなったのかについて考えていればファンがここまで落胆することはなかった。配信を観たくて配信にした人よりも、生で観られない寂しさを配信で補完した人たちに寄り添うことができる発言が多ければ救われたのではないかと思う

 

 

◎最後に

 2日目の千秋楽で「劇場に来るという勇気もあれば、配信を見る勇気もあったと思う」というような内容の挨拶があった。この配信を選んだ人たちを気遣うようなコメントは、実際に配信を観ていた人だけでなく、劇場に足を運んだ人も救われたであろう。この発言をした俳優以外、果たして今のこのコロナという状況の大変さ、ファンの劇場に行けないという悔しさを理解していたのか疑問が残る。

 少しカルトチックではあるが、この未曾有の事態が続いている日常に救いを求めている人は私以外にもいるであろう。俳優や製作側がファンがいないと成り立たないのと同じように、俳優がいないと自分の大切な部分が成り立たない人間は少なからずいる。そのような人たちが救われるような配信、発言が増えることを切に願っている。