遠征的自由帳

ライブ、舞台(主にミュージカル)の記録やら旅行記やら タイトルは造語

ミュージカル『bare』日本2020年版

曲が好きと作品が好きが比例しないのは石丸さん主演ミュージカル『パレード』で体験していたのでそこまで驚きはなかった。が、あまりにもラストがしんどい

 

以下ピーターとジェイソンのネタバレしかないです。

 

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たまたま見かけた韓国でのbareの動画を見かけて曲が好きすぎるので世界のどこかでやっているなら行きたいと思っていたら日本の青山でやっていることを知り急いでチケットを取った。それが確か1月中旬くらいだったと思う。その日からはラストに触れないような軽いあらすじだけに目を通しスリルミーとbareばかり聴いて昨日まで生きていた。しかも聴いていたのが全曲ではなく動画が上がっているもののみだった。特に聴いていたのはYou&I、そしてbare。bareなんてもうしばらくは聴けないですね 歌詞の意味を考えろ

 

メロディーを頭の中で何度も繰り返しわくわくしながら客席に座った浮かれピーヤ客を待ち受けていたのは受け止めきれないラストだった。今までしんどすぎる物語をみても「まあ舞台やし」という気持ちで流してしまうことが大半な自分がマチソワ間ずっとタリーズで泣きながら感想を打つ羽目になるとは思っていなかった。というか逆にどんなラストなら受け入れられたのか考えたけどしんどすぎて何も思い浮かばなかった 今ならいくつか思いつくけど。

 

“曝け出すことで生きることを決めた人と、曝け出した上で死を選んだ人のミュージカル”

 

思い返してみれば1幕から2人が幸せなシーンがひとつもなかった。だからこそ最後は少しでも救われると思ってた。ラストが幸せではないラストでも生き続けはすると思っていた。パーティーや誕生日会や稽古は盛り上がりがやがやしていたけど、そのなかでもピーターとジェイソンだけはずっと、物語の片隅のスポットライトの当たっていない世界に見えないように取り残されているように感じた。結構楽観主義者なところがあるので最後にジョンソンがルーカスからもらい飲んだのは舞台を成功させるためにただのエナジードリンクか何かだと信じ切っていた。死なないラストであってほしすぎたからトンチキな妄想をしてしまったことを赦してほしい。

2幕のロミジュリ本番直前「神父様に話したよ」ってジェイソンがピーターに伝えた時、良かったこれで救われると嬉しい気持ちになった。だけどジェイソンにとって、誰かに話すということ=死って気持ちが拭きれなくて、だから死を選ぶしかなかったと考えられなくはない。曝け出すことができなかった人たちの物語、と書かれているけどそれでもジェイソンは神父様に自分たちのお話をしたわけだから、それは立派な曝け出すことだったのだと思う。だけどジェイソンはそうやって話すこと自体耐えられなかったんだろうなあとも理解した。

純粋にジェイソンは一生誰にも曝け出さない方が苦しまなかったのだと思う。だけどそれをピーターが許さなかった。許さない、というのは劇中で「助けだす」ことと同義語だと思ってる。自分がゲイであることを言わないことが苦しいピーターと、言うことが苦しいジェイソンが最後まで一緒にいられる確率というのは極めて低い。そう考えると死というラストは考えられなくはないなと必死に自分を納得させた。

 

観終わった後少し調べてみたらbareのことを春のめざめやRENTと似てるという感想をいくつか拝見した。確かに雰囲気は似ているし制服の男女がわちゃわちゃしていると春めざだ…と思ってしまうけど、最後まで見てみると雰囲気以外はほとんど似ていなかった。bareの救いようのなさはどの作品とも比較できない。RENTのエンジェルが亡くなってしまうのは病気が原因だからどうしようもないのだけど、bareでジェイソンが亡くなるのは自殺なのでここの違いは大きいと思う。何度もいうけど雰囲気や音楽のテイストはまじで似てる。

 

この作品の唯一の救いは、ジェイソンが薬か毒を飲んだことに気がついたピーターの腕の中で死ねたことだけだと思う。そのまま眠るように倒れて、しっかり抱きとめられたままステージの上で亡くなった。最愛の人の側で一生を終えられたジェイソンがいちばんこの作品の中で救われたのかもしれない。誰かが自殺をすると決まって死は救済なのかどうかという議論が起こるが、bareにおいてはどれだけしんどい気持ちになろうとも他の幸せなラストを思いつこうともジェイソンにとって死は救済だったと今なら声を大にして言いたい。

ピーターが自分たちがゲイであることを知っていた神父様に向けて言った「赦します」

ここも観終わった直後は理解ができなかったけど、今冷静に考えると、シスターにゲイも黒人も抱えているものは同じだと言われたことを思い出したからこう答えたのかなと思ってしまった。特別にゲイである自分たちにかける必要のある言葉などない、だから神父様のことを赦すほかの選択肢はなかったのかなと思えた。まあここでピーターが「赦しません」と言うラストが単純に考えて想像がつかないのだけれども。

 

少し他のキャラの話をすると、何がしたかったのかわからなかったアイヴィとかクラスでくそでか声でオカマ野郎!とか言えてしまうマットとか思春期の子ども感が強すぎて自分の高校時代を思い出して恥ずかしい気持ちになった。どうしたいかわからずによくわからないことに走る気持ち、学生を経験したことがかる観客は多少なりとも理解できてむず痒くなると思う。

 

今回見比べができたのがジェイソンだけだったけど雰囲気が全く違ってザ・ダブルキャストという感じがした。安井さんジェイソンはすごく無理をしてクラスの人気者を演じている感があって辛かったし、小谷さんジェイソンは最初から苦しみが強すぎて文字通り愛のために死んだという印象が強かった。

 

あとこれはもう本編の内容とは関係がない話だけどジェイソンが亡くなった後ピーターは後追いしてると思ってます。「君は僕の全て」とまで伝えるほど心の底から想ってた人が死んでしまったピーターは1人では生きていけない気がする。私がピーターなら卒業式終わったあと後追いします。みなさんがピーターならどうするのかすごく気になるのでリプライでもコメントでもいいので教えてください。

 

以上とっ散らかしたbare感想でした。この先もずるずると考え続ける舞台になりそう…推しで再演し劇場の前で号泣する未来が見える。普通に怖い

まだまだ寒いですが、この先もよき観劇ライフをお過ごし下さい。